仕事や勉強で失敗が続いたとき、恋愛や人間関係で深く傷ついたとき、「もうどうでもいい」「何をしても無駄」と感じることがあります。その気持ちが強くなると、先のことを考えずに行動したり、自分の体や生活を粗末に扱ったりする状態に至ることがあります。

この記事では、自暴自棄の意味や心理的な背景、注意したいサインを整理します。いま投げやりな気持ちを抱えている人に向けて、負担の少ない立ち直り方も紹介します。

自暴自棄とは?「もうどうでもいい」と感じる心理状態

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自暴自棄の意味と由来

自暴自棄とは、失敗や失望などをきっかけに、自分を大切にできなくなり、将来への希望を手放して投げやりになることです。「じぼうじき」と読みます。

言葉の由来は、中国の古典『孟子』にある「自らをそこない、自らを棄てる人」という趣旨の表現です。もともとは、自分の価値や可能性を自分から否定する態度を指していました。現在は、「やけになる」「破れかぶれになる」「どうにでもなれと思う」といった意味で使われています。

ただし、自暴自棄は本人の性格が悪いから起こるものとは限りません。強いストレスや傷つきが重なり、冷静に考えたり、自分を守ったりする余力が少なくなっている状態とも考えられます。

自暴自棄のよくあるサイン

次のような変化が、いくつか重なって見られることがあります。

これらがすべて自暴自棄を意味するわけではありません。ただ、本人が「自分を守ることに関心が持てない」「先のことを考えられない」と感じている場合は、ひとりで抱え込まず相談先を探してみましょう。

なぜ投げやりになる?自暴自棄になる主な原因

仕事や学業で大きく失敗した

努力したのに結果が出ない状況が続くと、「自分には何をしても無理だ」と考えやすくなることがあります。就職活動で不採用が続く、試験に何度も落ちる、仕事で大きなミスをする。こうした評価されない経験が重なる場面です。

一度の失敗よりも、失敗を相談できないまま繰り返したり、休む時間がないまま次の課題に向かったりすることは心の負担を大きくする場合があります。

恋愛や人間関係で深く傷ついた

別れや裏切り、否定的な言葉や仲間外れは、自分の存在まで否定されたように感じさせることがあります。相手との関係を失った悲しさだけでなく、「自分には大切にされる価値がない」と考えてしまう人もいます。

人間関係の悩みは、周囲から見えにくいことも少なくありません。そのため、つらさを説明できず、ひとりで我慢し続けることがあります。

慢性的なストレスや心身の疲れがある

睡眠不足や過重な仕事、家庭の問題や経済的な不安などが長く続くと、判断力や気力が落ちることがあります。その結果、問題を整理するよりも、「もう全部やめたい」と感じやすくなる場合があります。

自暴自棄は、ひとつの出来事だけでなく、複数の負担が積み重なった結果として現れることもあります。

自暴自棄になりやすいときの考え方の特徴

完璧を求め、白黒で判断しやすい

「成功できなければ意味がない」「一度失敗したら終わり」と考えると、ひとつの出来事が人生全体の評価にまで広がりやすくなります。実際には、失敗した事実と、その人の価値は同じではありません。

自分を責めやすい

問題が起きると、状況や相手の事情を考える前に「全部自分が悪い」と結論づける人もいます。自分への批判が続くと、改善のために動く力より、罰を受けたいような気持ちが強くなることがあります。

本音を隠してひとりで抱え込みやすい

周囲に心配をかけたくない、弱いと思われたくないという思いから、つらさを隠すことがあります。しかし、相談しない状態が続くと、負担の大きさを自分でもつかみにくくなります。

自暴自棄から立ち直るための5つのステップ

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今の投げやりな感情を否定しない

最初に取り組みたいのは、「どうでもいいと思うほどつらかった」と、現在の状態をそのまま認めることです。前向きになろうと急ぐ必要はありません。

紙やスマートフォンに、「いま一番つらいこと」「本当はどうしてほしいか」を一言だけ書く方法もあります。感情を整理することが難しいときは、「限界」「疲れた」だけでも構いません。

睡眠と食事を優先する

心が大きく疲れているときは、問題の解決よりも、体の負担を減らすことを優先してみましょう。眠れないときに無理に眠ろうとせず、休みやすい環境をつくります。横になる、照明を落とす、画面を見る時間を短くするなどです。

食事は、温かい飲み物、ゼリー、スープ、おにぎりなど、口にしやすいものからで十分です。生活を完璧に戻すのではなく、最低限を保つことを目指します。

ハードルを下げて、いますぐできそうな行動を選ぶ

「立ち直る」という大きな目標ではなく、数分で終わる行動を選びましょう。カーテンを開ける、水を飲む、顔を洗う、5分だけ外の空気を吸うなどです。

できたことを評価するより、「行動できた事実」を確認します。できない日があっても、回復が後退したと決めつけなくて大丈夫です。

信頼できる第三者に話す

ひとりで考え続けると、同じ不安や自己否定が繰り返されることがあります。家族や友人、学校の相談室、職場の相談窓口、カウンセラーなどに相談してみましょう。「解決策より、まず話を聞いてほしい」と伝えてみましょう。

カウンセリングでは、話す内容をきれいにまとめておく必要はありません。うまく説明できない状態そのものを相談しても構いません。

ストレスの原因から距離を置く

つらさの原因がはっきりしている場合は、すぐにすべてを解決しようとせず、一時的に距離を置く方法があります。通知を切る、相手との連絡を翌日にする、仕事の判断を上司に相談するなど、刺激や負担を減らしてみましょう。

大きな決断を急がず、安全と休息を確保してから考えることも、自分を守るための選択です。

注意したい自暴自棄の行動

衝動的に退職や別れを決める

投げやりな気持ちが強いときは、将来の不利益を具体的に考える力が落ちていることがあります。退職や別れを否定する必要はありませんが、すぐに決めず、信頼できる人や専門家に相談してから判断する方法もあります。

飲酒や浪費などで苦しさを紛らわせる

一時的に気持ちがまぎれても、睡眠や金銭、人間関係の問題が大きくなることがあります。使う金額を決める、ひとりで飲まない、支払い手段を一時的に預けるなど、衝動が行動に移りにくい環境をつくりましょう。

自分や他者を傷つける行動をとる

自分を傷つけたい気持ちや、誰かに危害を加えそうな感覚があるときは、ひとりで耐えようとしないでください。危険につながる物や場所から離れ、近くの人に「いま一人にしないでほしい」と伝え、緊急時は119番や110番を利用してください。

「死にたい」「消えたい」と感じている場合は、厚生労働省の「まもろうよ こころ」も相談先を案内しています。電話相談では、24時間365日対応の「#いのちSOS」0120-061-338があります。地域の公的な相談窓口につながる「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556などもあります。受付時間や利用方法は変更されることがあるため、最新情報を確認してください。

自暴自棄になっている人への接し方

まずは否定せずに話を聞く

周囲の人は、すぐに励ますより、「そこまでつらかったんだね」「話してくれてありがとう」と受け止めることから始めてみましょう。相手が黙っているときも、無理に話させず、そばにいる選択があります。

かける言葉を選ぶ

次のような言葉は、相手の気持ちを否定せず、相談につなげやすい表現です。

一方で、「頑張れ」「考えすぎ」「もっと大変な人もいる」「そんなことで落ち込むな」といった言葉は、本人がすでに努力している場合、さらに自分を責めるきっかけになることがあります。

支える側も無理をしない

家族やパートナーが支える場合も、ひとりで責任を背負う必要はありません。連絡を受ける時間を決めたり、他の家族にも協力を頼んだりしましょう。相談機関に対応を相談するなど、支える人の負担も調整しましょう。

自暴自棄とうつ病を見分けられないときは専門家へ

自暴自棄は心理状態を表す言葉であり、それだけで病気と判断できるものではありません。一方で、気分の落ち込みや意欲の低下が長く続き、生活に大きな影響が出ている場合は、うつ病などの心の病気が関係している可能性もあります。

次のような状態が続くときは、自己判断で済ませず、精神科や心療内科、カウンセラーなどに相談してみましょう。

受診や相談は、状態が重くなってからでなくても利用できます。「自暴自棄なのか、ただ疲れているだけなのか分からない」と伝えるだけでも、相談の入り口になります。原因を一人で決めつけず、いまのつらさを安全に扱うために、専門家の力を借りてみてください。